※この記事はWWAアドベントカレンダー2025に投稿した記事です
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今は昔…
今は昔、およそ6年前の2020年2月……私は『おうごん町とたいようの使者』というWWAゲームを公開しました。
この30分程度で遊べるお手軽RPGのテーマは「統率」。
「より良い統率とはどんなものか?」
当時ぴっちぴちの大学生だった私の悩みの中心にはいつも人間関係がありました。
人間が集まって組織となるとき、なぜ問題ばかり起きるのだろう?
そんなことを考えながら作ったのがこのゲームです。
この記事では、「おうごん町とたいようの使者」の短い物語に込めた設定について語りたいと思います。ゲームとしての出来はさておき
要となるはストーリーに登場する3人の統率者です。

左からヨリばあちゃん、タイボク様、キング
こんな感じのイメージ
このゲームのストーリーは、ほのぼのとした村生まれの少年が村長のお願いで他の地域までおつかいに行くというもの。
「ヨリばあちゃん」は少年の住むたいよう村の村長。
海と林に面した豊かな土壌にある小さな村で、激辛のスパイスが特産品です。
村の北側にはご先祖様のお墓があり周りに白い花が咲いています。
過ごしやすい気候で太陽の光がよく届くから「たいよう村」。
少年はヨリばあちゃんのお願いで東にあるアマダレ村へ行くことになりました。
「おうごん町」という遠くの町からしつこく使者が派遣されてきて困っていたからです。(ヨリばあちゃんいわく通算56回)
アマダレ村の村長とヨリばあちゃんは古くからの知り合いで、ヨリばあちゃんは「あの方なら良い知恵を貸してくださるだろう!」と少年におつかいを頼んだのでした。
野生のモンスターの出る道を東へ進んでいく少年。
アマダレ村の近くまで来ると一気に周りの雰囲気が変わります。
苔のような濃い緑の地面にいくつもの大きな岩、白い花。
ドクロのような仮面をつけ群青や柳茶色の衣を着た人々が少年を出迎え、アマダレ村の村長のもとへ案内します。
アマダレ村の村長は「タイボク様」と呼ばれるおじいさんでした。
さて、おつかいに来た少年になんだか意味深で抽象的なことばかり言うタイボク様。
モンスターを倒したときに得られる経験値に応じて、ステータスが上昇する仕組みを提供してくれます。
「いや、だからなんなん??」という少年(とプレイヤー)の心の声が聞こえてきそうです。
しかし再度タイボク様に話しかけてみたり、たいよう村に戻ってみたりしてもストーリーが進行しないため、仕方なく少年(とプレイヤー)はおうごん町へ向かうことになります。
おうごん町は砂漠の町です。
広い領土は高い壁にぐるりと囲まれて、門番までいます。
たいよう村やアマダレ村にくらべて住民が多く、なんだかピリピリしている人も…
町の端には大きな金ピカの建物があり、少年はおうごん町のリーダー「キング」がそこにいることを知ります。
内装まで金ピカのキングの住まいに勤める使用人が少年に警告。
「こっから上はアタイたちも滅多に行かないよ。キングがどっかから連れてきた、凶暴なモンスターたちがしこたま繁殖してるからさ。」「アンタも、キングに会いたきゃ頑張って突破するんだね。」

ヨリばあちゃんの家は「ご自由にお入りください」
だったのになあ
この後、少年は隠しアイテムを探したりレベルを上げたりして地道に力を鍛え、モンスターの巣を突破してキングと直談判……するはずが、事は穏便に進まなかった…!
少年の運命やいかに?
この物語に登場する3人のリーダー、そして3つの村・町にはそれぞれ異なる特徴があります。
たいよう村には、友好的で穏やかな気質の住民たちしかいません。
住民たちはみなヨリばあちゃんや他の住民たちのことが好きで、助け合って暮らしています。
「うちの村長さん、貴重なものを一人じめしないからいいわよね。」
いわば「家族」の形態です。
栄えたおうごん町から「たいよう村の豊かな資源を40%よこせ」という使いが来るぐらいには余裕のある生活を営んでいるようですから、その豊かさも住民たちの穏やかさにひと役買っているかもしれません。
アマダレ村の住民たちはみな長であるタイボク様の教えを崇拝しています。
湿度の高い岩だらけの狭い土地で、飛びぬけて優秀な個体(タイボク様)がその他の個体を従わせることで生きのびています。
「ひとたびタイボク様のお怒りに触れれば町がひとつ滅びるであろう!」
「皆で手を取り合えば、資源の少ないこの地でも豊かに生きていけるのじゃ。」
アマダレ村は「宗教」の仕組みでまとまっています。
仮面とローブで個性を隠し、同じ思想を全員で共有しているのです。
おうごん町の人々は、他2つの村と違って必ずしも長であるキングを慕っていません。
自身の功績を得意げに語る人、キングからの評価を気にする人、たいよう村を見下す人、自分は落ちこぼれだと自嘲する人……同じ町に住む人々の間に格差があり、他者との比較の意識が住民たちに根づいていることが伺えます。
「なによ、何を考えようと私の勝手でしょ。私たちには自由に考え話す権利がみとめられているのよ。」
おうごん町はキングが支配する独裁国家、に見えて実は「法治国家」に近い町です。
大きなコミュニティに必要な要素――雇用、交易、防衛など――がシステム化してあり、そのシステムを機能させるための教育を住民に受けさせる学校があります。
誰も住んでいなかった広い砂漠の地に目をつけたキングは、水をひき、町の仕組みをつくり、公平なルールに従って生活するよう人々に説いたのでした。
また、貨幣制度があるのはおうごん町だけ。
「良い仕事に就けば、たくさんお金を稼いで、豊かな生活を送ることができます。」と語る住民がいるように、資本主義の考えにもとづいた町です。
「いくらお金や食べ物を与えても、忠誠心が育つわけじゃあないね。」というキングの台詞からは、憂いが感じられます。

激辛カレーパーリィ
このゲームにはクリア画面が2種類、ゲームオーバー画面が2種類用意されています。
それぞれのシーンで聞けるエピソードをつなぎ合わせると、3人の統率者たちの関係が垣間見えます。
「ブレンというのはキングの昔の名前じゃ。私とヨリ村長、そしてブレンは、竹馬の友だよ。」
「いつからああなってしまったのか、病める統治者ブレン!」
「ブレン君はずいぶんと変わってしまったみたいね。昔はもっと優しい人だったと思うのだけど…」
「いいや、ヨリちゃん。ブレンは昔から何も変わっておらぬ。ただ、少しの運が悪かったのだろう」
「タイボク様はキング殿と何を話されたのでしょうな……キング殿が無礼な振舞いをしていなければいいのだが…。」
才能ある幼なじみの3人はやがて大人になり、それぞれのやり方で人々を率いることになりました。
しかし、どんな統率にも欠点があります。
ヨリ(頼)ばあちゃんを中心に皆が家族同然に仲良く暮らすたいよう村は、ヨリばあちゃん亡き後にだんだんと結託が弱くなっていくでしょう。
生活を維持させるための明確なルールも無いため、能力のある若者が村の大半を占めるときはうまくいっても、災害などをきっかけにバランスが崩れると簡単に危機に陥ってしまいます。
「ぼくはこの村から出たことがないんだ。」「凶暴な野生動物なんて怖くないさ!」
また性善説と信頼で成り立ち、防衛の仕組みのないこの豊かな村は狙われやすく、他国に攻め込まれたらひとたまりもありません。
外的要因による打撃にとても弱いのです。
タイボク(大木)様率いるアマダレ村の欠点はずばり、タイボク様の思想に従えない者の居場所が用意されないところでしょう。
ヨリばあちゃんが「母」ならタイボク様は「神」、たいよう村とアマダレ村では長のあり方が違います。
「……あ、今の言葉づかいについてはタイボク様には内緒ですぞ。」
住民たちはタイボク様に厳しい土地で自律し生きていく術を伝授され、タイボク様亡き後には次のタイボク様が長となります。
アマダレ村は細く長く安定して続いていく組織ですが、言動や思想の自由はほとんどなく、新しい風が吹き込むチャンスもありません。
ブレン(brain)……キングが頂点に立つおうごん町の欠点は、町の人々(キングでさえも)が口にしている通り。
金、競争、格差、優秀な者に重要な役割をあてがい高い報酬と評価を与えることは、そうでない者の立場が必然的に下がることを意味します。
おうごん町という箱のなかにルールと自由を保証したキングは、常に住民たちを競い合わせ、優れた個体を選ぶことで町を成長させ続けることができます。
しかし、キングを含め住民たちは他者への信頼や助け合いの気持ちを忘れ、豊かさを己の内側ではなくカネや地位に求めて疲弊している。
「現実は哀しく残酷だ。私は愚かな民の指針であり続けなければならない。絶対的な富と力によって…」
タイボク様が言っていた「おうごん町の不運」はまさにこの状態のことです。
皆さんならどの村・町に住みたいでしょうか?

ヨリばあちゃんの激辛耐性は
幼い頃からあった様子
さてここで、ストーリーには直接出てこない3人の統率者たちのお話を。
もともと仲良しだったはずの3人。
ヨリばあちゃんとタイボク様が今も仲良しなのはゲーム内でわかりやすく描写されていますが、ブレンはどうなのでしょうか。
仲良しだったはずのヨリちゃんの村へブレンがしつこく使者を送るのはなぜ?56回も使者を送られたらさすがのヨリばあちゃんでもブレンのこと嫌いにならない?タイボク様が変身して走って行ったあと、ブレンは倒されちゃったの?
いいえ、ヨリばあちゃんもタイボク様も、ブレンのことを変わらず友達だと思っています。
ブレンも他の2人のことを嫌っていません。
ヨリばあちゃんの家の扉をばかすか叩いて「チッこの老いぼれがぁ!」なんて吐き捨てて出ていく使者のありさまをブレンは知りません。
もっと紳士的に、丁寧に交渉を進めているものだと思っています。
おうごん町の悪い部分が出たのでしょう、下請けの下請けの下請けに仕事を依頼した結果ああなってしまっているのです。
あの横暴な使者はブレンの意図など理解しようともしません。形だけの仕事をして、報酬がもらえればそれでいいのですから。
ブレンがたいよう村へ持ちかける交渉の内容は「村の資源の半分くらいよこせ、そうしたら武装兵を渡す」
砂漠の町にとって、海や林の資源に恵まれたたいよう村はぜひとも手に入れたい場所。
たいよう村がおうごん町の一部になれば、おうごん町はさらに豊かに発展するでしょう。
しかしブレンは、資源の搾取が目的でたいよう村に交渉を持ちかけているのではありません。
ヨリばあちゃん率いるたいよう村の弱さを見抜いて、危機的な状況になる前に自分の統治下に置いて守ろうとしているのです。
たいよう村なんて海から海賊的なやからが来たら秒で滅びますから、なんとしてでも兵士を置いておきたい。
タイボク様はそんなブレンの意図を察しています。
ヨリばあちゃんはまったく気づいていないけど。(罪)
人を疑うことを知らないヨリばあちゃんは、ブレンに対して「どうしちゃったのかしらねぇ」ぐらいにしか思っておらず、彼の振舞いを理由に古い友達を遠ざけることはありません。
それがヨリばあちゃんの弱さであり強さであります。
無条件に人を信じ、頼り、感謝し、心から恩を返す、それができるからいつも人の輪のなかにいて、ピンチのときは誰かが助けてくれるのです。
友好の証として特産品の花をたいよう村に贈るタイボク様はもちろん、主人公も、「現実はそんな甘くない」と憤るブレンも、皆ヨリばあちゃんを助けています。
「いくらお金や食べ物を与えても忠誠心が育つわけじゃない」と自嘲気味に語るブレンですが、彼に忠誠を誓っている存在が少なくとも1人。
少年とブレンが直接バトル(!)することになったとき出てきた兵士3人のうち、1人だけ少し強くて台詞があります。
「ぐふ……その方に手を出すな!」
彼は砂漠に町をつくろうとするブレンの意思に賛同し、騎士として主君を守ることを選んだ古い仲間でしょう。
ブレンに敗れた少年が牢屋行きになるエンド画面にはウヒャウヒャ笑うもう1人の囚人がおり、「いつからああなってしまったのか、病める統治者ブレン」など昔からブレンを知っていそうな様子です。
彼は町をつくる過程でブレンに口出ししすぎてついに牢屋にぶちこまれた初期メン。
「おとなしくしていればじきに出してもらえるさ!」と言っているのに彼がいまだ牢屋に居座っているのは、鉄格子越しにずっとブレンにああだこうだ言っているからです。
「議会を作るべきだ!私がやろう!ヒャッヒャッ!」「まだその時期ではないと言っている!」みたいな言い合いを延々としてます。たぶん。
タイボク様もブレンやおうごん町の様子をよく観察しており、ブレンの周りには意外と味方が多いのですが、人を信じなくなった孤独な彼はそのことに気づいていないのでした。
主人公がピンチのとき変身して助けてくれた強きジジイことタイボク様は、「全ての生命との調和」を最も重要と考える人物。
生き物の命はヒトを含めみな等しく自然の輪の一部であり、本来なら繁栄するも滅びるも必ず起こる現象、ならばむやみに自然の法則に手を入れるべきではないがヒトの欲もまた自然と生ずるものであるならば我々のすべきことは自律そして隣人を信頼し協力しうんたらかんたら
…………
要するに、タイボク様はタイボク様独自の理想を掲げて一貫した行動をしています。
「古いしがらみが青き芽を枯れさせることがあってはならぬ。ブレン……いや、今はキングといったか。」
私たちがその思想をすぐさま理解することは叶いませんが、タイボク様がおうごん町のありかたを理想的ではないと解釈しながらもブレンの意思を尊重していることはうかがえます。
友達が行き過ぎたことをしたと感じたときだけ止めにくる友達、ブレンもタイボク様の言うことには耳を傾けます。
ちなみにタイボク様もたいよう村の弱さには気づいていますが、たいよう村についてはこのままいけば自然に美しく滅びる(そして素朴な知恵により再生する)ので余計な対策はしなくていいみたいに考えています。難しい思想にござる。
最近は歳のせいかヨリばあちゃんの激辛カレーに胃をやられ気味だそうです。

いうて脳も内臓ですから
以上、『おうごん町とたいようの使者』の設定語りでございました。
記事を書きながら、私はおうごん町に住みたいと思いました。
病気になったとき最先端の医療を受けられるのはきっとおうごん町だから!
ここまでお読みくださりありがとうございました。
これからも頭のなかに広がる妄想ワールドを現実世界に絞りだしていきたいと思います。
なんで寿命って更新制度ないんですか?時間が足りません。
明日はアルクスさんの記事です!お楽しみに!
もう一度リンクを貼っておきやす。→WWAアドベンドカレンダー2025
おしまい。よいお年を